六畳の享楽

アニメ・ゲームの感想を書いたりするつもりです

子供たちの選択と、それを見送る大人の物語 ‐ 『おおかみこどもの雨と雪』雑感

先日『おおかみこどもの雨と雪』を見てきました。気付けば『サマーウォーズ』から3年、『時かけ』からは6年も経ってるんですね。全然そんな気しませんが、早いものです*1

さて、折角なので例によって感想でも書いておこうと思います。ネタバレ全開なのでご注意ください。

僕はですね、この映画についてはエンディングテーマが大体語ってくれてると思ってます。これは家族の話で、子供の成長の話で、選択の話です。それを僕ら観客が一歩引いた視点から、大人*2として、若しくはそろそろ大人になる未来が現実的に見え始めてきた青年として見る、というのが想定されている。そんな印象を受けました。

狼と人、というモチーフがあると、ついつい自然と人間という対立項に目が行ってしまいがちですが、この作品について言えばあまりそういった目的を持って作られたようには感じませんでした*3。それよりもむしろ、狼と人というわかりやすい可能性、選択の道を持ってしまった二人がどのようにして生きるようになるか、というところに焦点があったように思います。田舎という舞台設定は自然と人間社会の入り混じった境界域として、子供らの選択に制限をもたらさないという意味があったように思います。

印象深かったのは、子供らの選択が親の介在無しに自己意思によって行われるように描かれていたところです。親としては少し寂しいんですけど、エール送るしかないんですよね、もう。この作品、富野監督がべた褒めだったということですが、個人を尊重しつつ次代を産み、育てていく共同体としての家族という描き方に思うところがあったんじゃないでしょうか。妄想ですが。

作中は雪の落ち着いた語りによる追想といった趣で、ラストにおいては静かに将来の存在を感じさせるような作品でした。選択をした子供たちにはその後の”自らの”将来がしっかりと存在しています。いいですね。

【おまけ1】一人で見に行った僕の隣の席にはファミリーが座っていたのですが、上映後お父さんらしき人が娘に向かって「子供には少し難しかったかな?」と語りかける言葉が何とも言えない響きでした。子供がいたら、その子が自分の手を離れる瞬間とか考えたりするのかなーなんて思ったり。さて。

【おまけ2】これ言うとまるっきり台無しなんですが、僕としてはもう少しわかりやすくエンタメっぽい作品のほうが好きです。上映後はそんなに興奮度高くなかったです。

*1:老化

*2:子持ちを想定

*3:インタビューの類を全く読んでないので実際のところはわかりませんが。こっちメインだったらとても恥ずかしいです///